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揉めない遺言書作成の6つのポイント

ご相談事例

 私は、今70歳です。先祖代々地主のため、地方に多くの不動産(総額2億)を所有しています。その他、預金を含む金融資産が2000万円ほどあります。

 私には、3人息子がいますが、二男と三男は大学卒業と東京で出てしまいましたので、地元に残った長男に先祖代々の土地を守ってもらいたいと思っています。

 最近では遺言を書くことは広く知られていますが、遺言書を残したばかりに、かえって「争続」を招き、紛争に発展するケースもあり、揉めない遺言書を書くことは意外と難しいものです。

 そこで、今回は、揉めない遺言書作成の6つポイントについてご説明します。

Point① 遺言の内容をオープンにする

 遺言書を巡る問題で一番多いのが、後から相続人の1人が「誰かが書かせた」と言い出すケースです。遺言書を作成した後には相続人全員に遺言の内容を知らせておくことが大切です。

 ただし、注意しなければならないのは、作成する前に知らせると、自分に有利な遺言書を書かせようとして、相続の前哨戦が始まってしまいかねませんので、作成した後に知らせるとよいでしょう。

 また、「誰かが書かせた」というトラブルを避けるには、つぎに述べる公正証書遺言で準備することも大切です。

Point② 公正証書遺言を選択する。

 遺言書には、【普通方式の遺言書】と、【特別方式の遺言書】の2種類の形式がありますが、通常は、普通方式の中の自筆証書遺言か公正証書遺言のいずれかを選択することになります。

普通方式の遺言書
  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言
特別方式の遺言書
  • 一般危急時遺言
  • 難船危急時遺言
  • 一般隔絶地遺言
  • 船舶隔絶地遺言

 遺言書でトラブルとなる原因は多く分けて形式面に不備がある場合と内容に問題がある遺言書トラブルの2つです。

 形式面でトラブルになりやすいのが自筆証書遺言です。自筆証書遺言の場合は、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならないなど、法律の定める要件を満たしていないと全て無効となってしまいます。  

 また、自筆証書遺言では本人が自書したものであるか(偽造であるか)が問題となる場合があります。さらに、自筆証書遺言は自らが保管しておかなければならないため紛失の心配があります。

 対する公正証書遺言は、そういった問題はほぼ起こりません。

 公正証書遺言では公証人が作成するため、形式面に不備があるとは考え難く、自分自身で作成する自筆証書遺言ではどうしても形式が整っていないものが出てきてしまうからです。費用を払えば自宅や病院などでも作成することができ、公証役場で預かってもらえるので紛失などの心配は基本ありません。

 それぞれ遺言書にはメリット、デメリットがありますが、遺産争続を回避するためには、「公正証書遺言」が安全確実です。 

~公正証書作成にあたっては事前に専門家への相談をおすすめします~

 公正証書遺言は、公証役場に依頼して作成しますが、遺産が多い場合や分割方法などの内容が複雑になる場合には、公証役場に依頼するにあたっては、遺言書案の作成や戸籍謄本、固定資産評価証明書、不動産の登記事項証明書等の財産関係資料の取得などを弁護士などの専門家に依頼することをおススメします。せっかく遺言を作るのであれば、ちょっとお金と手間がかかりますけど、ちゃんと公正証書にして、専門家に中身を相談して書くことを強くお勧めしたいところです。

〔民法改正による自筆証書の要件緩和〕

 なお民法の改正で来年の1月13日から自筆証書遺言の用件が緩和されます。財産目録各ページに署名、押印すればパソコンによる作成や不動産登記簿のコピーでもよくなります。

 また、2020年7月までに自筆証書を法務局で預かる制度が創設され、紛失などの心配もなくなり、検認も不要になります。

 ただし、これは法務局が保管するだけで、内容の有効性を判断するわけではありませんので、保管したからとって争続を回避できるわけではありません。 

 ですので、民法改正後も、自筆証書遺言よりも公正証書遺言を検討したほうがよいといえます。

Point③ 遺言の内容を明確にする

 つぎに多いトラブルとしては遺産の内容が不明確だったり、一部の財産しか書いてない場合などです。あいまいな内容はトラブルのもとです。明確な内容の遺言書作成が求められます。

 遺言書に書いてあることの意味が不明確であったり、矛盾していたりして、亡くなった後に、遺言書の解釈を巡って争いとなることがあります。

 例えば、3人の子供がいる遺言者が、「私の不動産と動産の全てを長男に相続させる。」と書いた自筆証書遺言を残して亡くなったところ、遺言者には自宅土地建物や家財道具以外に、多額の預金や株式もあったという場合、この預金や株はどうなるのか、という場合です。

 上記の相談では、長男は、「私の不動産と動産の全て」は、全ての遺産という意味だから、預金や株も含めて自分が相続すると主張するでしょう。一方、他の兄弟は、預金や株は遺言書に書かれていないので、遺言書では誰が相続するか決まっていないから、遺産分割協議して決めるべきだと主張するでしょう。

 当事者間で話し合いがつかなければ、最終的には裁判となり、法廷で遺言書の解釈が争われることになりますので、そういったトラブルを避けるためにも遺言書の内容はできるかぎり明確しておくべきです。

Point④ 遺留分に配慮する

 次に、揉めない遺言にするためのポイントは、他の相続人の遺留分に配慮した内容の遺言にすることです。

 上記の相談事例でいえば、相談者としては長男に先祖代々の土地を守ってもらいたという意向を示していることから、所有している総額2億円の土地の全てを希望しています。そこで問題になるのが遺留分です。

 遺留分とは、兄妹姉妹以外の相続人に与えられた最低限の相続分のことです。遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人となる場合は遺産の3分の1、その他の場合には遺産の2分の1とされています。

 遺留分は遺言者の意思によって一方的に奪うことができません。そのため遺言者によって、一人の相続人に対して遺産を全てないし大部分を遺贈させる旨の遺言がなされたとしても、他の相続人は、受遺者に対して遺留分減殺請求権を行使して、受遺者から自己の遺留分相当の遺産を取り戻すことができます(なお、民法改正後(平成31年7月1日施行期日以降)は、相続人は受遺者に対し、侵害された遺留分に相当する金員の請求を行うことができます。)。

 したがいまして、上記の相談事例では二男と三男の遺留分は全体の6分の1ずつですが、相談者が長男に対して不動産を全て相続させる遺言を行うことにより、二男と三男の遺留分が侵害されることになります。

 遺言者が他の相続人の遺留分を侵害する内容の遺言を行うことは妨げられませんが(遺言自由の原則)、二男や三男が長男に対して遺留分減殺請求(遺留分侵害請求)を行うことが予想されます。

 そのため、自分の死後に兄弟間での遺留分を巡る紛争を予防するためには、遺言によって二男や三男の遺留分を確保することが望ましいといえます。

 具体的には、不動産以外にも二男や三男に遺留分相当額の遺産(預金や株など)を相続させたり、不動産以外に主な財産がなければ、長男の遺留分に相当する土地の一部を相続させたり、存命中に一部の不動産を換価して、それを二男や三男に相続させるなどの方法が考えられます。

Point⑤ 相続人全員の心情に配慮すること

 遺言を作成する理由のほとんどが死後、家族が相続財産で争わないために作成することだと思います。

 はっきり言ってしまえば、争いになるときはどのような遺言であろうと関係なく争いになります。ただ遺言書があることで、そのような争いを未然に防ぐこともできますし、逆に争いの元になってしまうこともあります。

 遺言書を作成するうえで一番大事なことは、遺言者本人の想いや考えが相続人全員にきちんと伝わることだと思います。

 そこで活用したいのが「付言事項」です。

 付言事項とは、法律に定められていないことを遺言書で付言する事項のことをいいます(法定外事項)。付言事項については法的な効力を生じませんが、相続人らに残す言葉を付加することができます。

 1人の相続人に遺産を多く譲ろうと考える場合でも、遺言書は、遺留分をできるだけ侵害しない内容にしたり、なぜそのような遺言内容にしたのかを「付言事項」という形で説明したりすることで、相続人間の争いを防ぐ効果があります。

 遺言書は、相続人への最後のメッセージです。財産のことしか書いてないと、どうして親が遺言を自分に残してくれたのかわからない、もらう分が少ない子どもとしては、親は自分のことが嫌いだったんだろうか、親はお兄ちゃんの方が好きだったんだろうか、これは誰かに無理やり書かされたのか、などと考えてしまうことになります。

 相続争いの原因の多くは感情のもつれです。理屈では解決できない部分も多く、相続人の感情の対立をできる限りなくすことが実は一番大切なことなのです。

 遺言書を残された方にすんなり受け入れてもらうために、単に遺産分割のことだけを書くのではなく、「付言事項」を利用して、愛情込めて書いてあげることが重要です。 

〔注意すべき付言事項〕

 遺言書の本来の目的を果たすためにも付言事項を記すことは大切です。もっとも、付言事項を記載するうえで注意すべき点もあります。

 家族の中に財産を相続させたくない相続人がいる場合に、その相続人に関しては相続させない旨を記すか、または根本的に記さないで他の者に全て相続させる旨だけを記せばいいのですが、その相続人に対する恨みや説教などを付記しているケースがあります。元々争う気のなかった相続人の方でも、その遺言書により憤慨し、遺言の無効を主張したり、遺留分を巡って争いになってしまうこともあるので円満な相続に支障をきたすような余計な付言事項はできるかぎり避けるべきでしょう。

Point⑥ 遺言書のメンテナンス

 遺言書は一度作成したら終わりではありません。

 遺言書を作成した場合でも、その後に不動産の売買などにより相続財産に変動が生じた場合や結婚、離婚、養子縁組などにより相続人の変動が生じた場合など、遺言書の内容を見直していく必要があります。

 あまりにも古い遺言書は、そもそも遺言者の最終意思を反映していない可能性もありますし(その点を巡って争いになる可能性がある)、変更が生じた部分をきちんと遺言に反映させないと遺言が無効となってしまう可能性もあります。

 遺言書は何度も変更することができますので、定期的に見直していくことが大切です。

(執筆者:弁護士田島直明)

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