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遺言の意味が分からない!?—遺言の解釈の問題

 遺言能力がある遺言者が、適式に作成した遺言であっても、その遺言の解釈をめぐって争いになる場合があります。

 特に、自筆証書遺言は、公正証書遺言とは異なり、自分で誰にも相談せずに作成することができます。このため、時々、遺言書に書いてあることの意味が不明確であったり、矛盾していたりして、亡くなった後に、相続人間で遺言書の解釈を巡って争いとなることがあります。

 例えば、遺言中の、特定の財産を特定の相続人に「相続させる」という表現について、以前は遺贈なのか、それとも遺産分割方法の指定なのかという2つの解釈が問題となっていました。今は判例により、原則として遺贈ではなく遺産分割方法の指定であると考えられるようになりました(最高裁平成3年4月19日判決民集45巻4号477頁)が、これ以外の表現でも、遺言書の解釈は問題となりやすい点です。

 他に、遺言の解釈が問題になった判例として、以下のものがあります。

「法的に定められたる相続人」とは?

最判平成17年7月22日(家月58巻1号83頁)

 遺言者は、自己の妻と遺言者の兄との間に生まれた子について、遺言者の子であるとして虚偽の出生届を出していた。

 遺言者は遺言書に「法的に定められたる相続人を以って相続を与える」と記載したため、「法的に定められたる相続人」とは単に法定相続人を指すものかどうかにつき、解釈が問題となった。

 最高裁は、遺言者と戸籍上の長男の生前の養育・生活状況や、遺言時に戸籍上の相続人は長男しかいなかったこと等から、「法的に定められたる相続人」とは虚偽の出生届により戸籍上は長男と記載されていた者を指すと解釈した。

「A所有の不動産である東京都〇〇区…(住居表示)をBに遺贈する」建物だけ遺贈?土地も含まれる?

最判平成13年3月13日(家月53巻9号43頁)

 遺言書には遺贈する物として単に「東京都〇〇区△△丁目✕✕(住居表示)の不動産」と記載されていた。

 原審は、この遺言書は住居表示で示された建物のみを遺贈するものと解釈したが、最高裁は、住所地にある土地と建物を一体として、遺言者の各共有持分を遺贈する意思を表示していたと解釈した。

 上記の判例のように、遺言で解釈について問題が生じたときは、様々な事情を考慮して総合的に判断されることとなります。

 遺言の解釈について、そのように総合的に解釈するという一般的な基準を示した判例としては、以下のものがあります。

遺言書の解釈についての一般論を示した判例

最判昭和58年3月18日(家月36巻3号143頁)

 遺言の解釈に当たっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書が多数の条項からなる場合にそのうちの特定の条項を解釈するに当たっても、単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出しその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情および遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探究し当該条項の趣旨を確定すべきものであると解するのが相当である。 

 以上のとおり、遺言の解釈が問題となった場合、最終的には裁判所がその文意を総合的に判断することとなります。

 紛争予防のポイントは、遺言の内容の解釈について疑義が生じないよう、内容が明確な遺言書を作成することです。

 また、遺言書の解釈は、遺言書の中の特定の文字の形式的な意味だけでは決まりませんので、被相続人死亡後に出てきた遺言書の解釈に疑問があるときは、遺言書作成や相続問題に精通した弁護士に相談するとよいでしょう。

(執筆者:弁護士 田島直明)

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