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私の父は、私に、実家の土地や建物などの大部分の遺産を相続させる旨の公正証書遺言を作成していましたが、先月、病気で亡くなりました。
私の弟からは、公正証書遺言が書かれている内容は争わないが、自分も生前父の面倒を見ていたのに、遺産の大部分が私に行くのは納得ができないとして、先日、弁護士を立てて遺留分侵害額請求を求める旨の内容証明郵便を送ってきました。
私は、これからどのように対応したらよいのでしょうか。
最近は遺言を作成する方が多くなりましたが、それに伴って不公平な内容の遺言になっていることが少なくありません。そのような場合に必ず取っていいほど問題になるのが遺留分です。
遺留分は、相続人に法律上保障された最低限の相続分です。
この遺留分に満たない遺産しか得られない相続人は、相続発生が2019年7月1日以降の場合、遺留分の侵害があるとして金銭の支払いを請求することができます。そのため、遺言などによって相続分がゼロとされてしまった相続人から、遺留分の侵害があるとして請求を受けた場合、請求金額の是非はともかく、金銭の支払いを全て免れるのは難しいことが多いかもしれません。
そこで、ここでは遺留分侵害額請求された方が、取るべき対応のポイントについて解説します。
自宅に内容証明郵便が届いたものの、「どうしたら良いか分からない」、「対応するのが面倒」、「せっかくもらった遺産を渡したくない」などという気持ちから無視したり、ほったらかしたくなる気持ちになることがあります。
しかし、相手が、わざわざ内容証明郵便で請求しているのですから、無視しても問題が解決することはありません。
通常、請求を無視すれば、相手方はさらに調停や訴訟を起こしてくることになる可能性が高いでしょう。侵害された遺留分を請求するために調停や訴訟を起こしてくると思われますので、もし、遺留分を侵害している可能性が高ければ、調停や訴訟になる前に早めに任意交渉をはじめるのがよいでしょう。
状況次第では、調停や訴訟を起こされたら対応するが、それまでは対応しないという方法もあり得ますが、経済的、精神的な負担を考えるとあまり得策ではないでしょう。
遺言の内容が請求してきた相手の遺留分を侵害している可能性があれば、相手に支払う金額をできるかぎり減らし、もらった相続財産を守ることを考えることになります。
その際は、つぎの3つのポイントを検討してみましょう。
① 遺産の評価額を争う
遺留分は、遺産に含まれる不動産の評価額を算定した上で、請求されることが通常です。また、不動産は遺産の中でも大きな価値を占めることが多いことから、不動産の評価額を争うことは、遺留分侵害額請求を減額することに効果的といえます。
不動産の評価方法は、路線価を修正する方法、公示地価を基礎とする方法、不動産業者等に査定してもらう方法などを根拠に主張されることが一般的です。
これらの評価方法自体は、対象不動産の大まかな評価額を固める意味で有効ですが、不動産は個別性が高い物件であるため、例えば、地中にガラが存在する、地形が悪い、接道要件を満たさないため再建築ができない等もあり、当該物件の特徴にあわせて評価額の修正が必要な事例もあります。
上記のような評価額を減額につながる要素は、遺留分の請求においては除外されているケースが多いため、遺留分侵害額請求を受けた場合には、物件の特徴を調査するなど慎重に検討したほうがよいでしょう。
② 相続債務を確認する
遺留分の額を算定する場合、遺産に含まれる積極財産から消極財産(相続債務)を控除することとされています。
したがって、遺留分侵害額請求を受けた場合、遺留分算定において相続債務が適正に控除されているかどうかを検討します。
また、金融機関からの借入等は、融資に関する契約書や確定申告時資料などから容易に判明しますが、相続債務のなかには親族からの借入のため契約書等の書面が存在しないものもあります。このような債務も相続債務に含まれるため、相続債務に計上することで遺留分の額を減額することができます。
③ 遺留分権利者が受けた特別受益や具体的相続分などを控除する
遺留分侵害額はつぎの計算式で算定します(新民法 1046条2項)
遺留分侵害額
=遺留分額(基礎財産 × 1/2(法定相続人が直系尊属のみの場合は1/3)
- 遺留分権利者の具体的相続分
- 遺留分権利者が受けた遺贈又は特別受益
+ 遺留分権利者が承継する債務(遺留分権利者承継債務)
したがいまして、遺留分侵害額請求者が受けた遺贈や特別受益、具体的相続分を主張することによって、遺留分侵害額を減額することができる場合があります。
遺留分権利者が被相続人の生前に被相続人から贈与を受けていた等、遺留分侵害額請求権者に特別受益が認められる場合は、遺留分額から特別受益額が控除されることになります。
また、遺言書において遺留分侵害額請求者に相続させる財産があった場合も遺留分額から相続財産額が同様に控除されます。
したがって、遺留分侵害額請求を受けた側からは、遺留分侵害額請求権者が受けた遺贈や特別受益、具体的相続分などを指摘することにより遺留分額を減らすことができます。
ただし、特別受益については、証拠による立証や特別受益該当性の有無などが問題となることがあります。
特別受益を主張すべきかどうか悩む場合には弁護士に相談されることをおすすめします。
上記の反論のポイントを踏まえながら、相手方が請求してきた遺留分侵害額が妥当かどうかについて慎重に検討します。
遺産の中に不動産や未公開株があるなど、遺産の評価額の判断が分かれるような財産が含まれているような場合には、こちらも業者や専門家にお願いして査定をするなどして金額の妥当性を検討し、状況次第では、双方が一定程度譲歩することを前提に示談交渉によって解決を図ることが考えられます。
示談交渉がまとまらなければ、最終的には調停あるいは裁判によって支払いを求めることになります。
もっとも、請求する側としても、調停や裁判は時間と費用がかかる反面、結局は金銭的な解決を目指すことには変わりがありませんが、示談交渉に向いている事件類型といえます。
なお、遺留分侵害額請求には、被相続人が死亡した後、相続人が自分の遺留分が侵害されていることを知ってから1年、あるいは相続開始から10年という期間制限(消滅時効)がありますので、もし、相手方の遺留分侵害額請求について時効が成立していると思われる場合には請求自体を拒むことができる場合もあります。
このような場合は、安易に相手方と交渉を行わない方がいいでしょう。時効が成立しているにもかかわらず請求を認めてしまうような言動をすると時効の成立を主張できなくなる危険があります。
示談交渉に入る場合には、相続問題に精通した弁護士に相談し、できるかぎりの準備をしたうえで交渉に進みましょう。
遺留分の算定や相続財産の評価方法は非常に難しく、他の相続人から遺留分減殺請求を受けた場合であっても、相手の請求に根拠があるかどうかについて正確な判断が難しいことは少なくありません。
もし、他の相続人から遺留分減殺請求をされた場合には、まずは一度弁護士に相談をし、的確なアドバイスを求めることをおすすめします。
当事務所では、遺言、遺産分割、遺留分などの相続案件を数多く処理してきました。遺留分を請求されてお困りの方はまずはお気軽にお問合せください。
弁護士が上記のようなポイントを踏まえて、遺留分減殺請求への対応についてアドバイスさせて頂きます。
(執筆者:弁護士 田島直明)
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