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私は、都内で食品加工業を営む株式会社で代表取締役をしており、長男が専務取締役をしています。従業員は、30名ほどで、株主構成は、創業以来私が1人株主です。
私は、来年70歳になりますが、昨年から持病が悪化し、仕事をするのがきつくなってきたので、経営を長男に譲りたいと考えています。
ただ、長男の他にも妻や二男、三男がいますので、いつ、どのようなタイミングで長男に会社を譲ったらよいのでしょうか。
「事業承継」には、オーナー経営者の子どもに承継させる方法(親族間承継)と②親族でない従業員や役員、外部から招いた者に承継させる方法(親族外承継)、そして③第三者に事業を売却等により承継させる方法(M&A)の3つの方法があります。
後継者がいない場合には、会社を・事業を解散・清算(いわゆる廃業)することも考えられますが、経営が順調な場合には、③の方法をとることで事業自体は存続させ、廃業よりも多くの資産を残すことができます。
ここでは、M&Aの手法とそれぞれのメリット、デメリットについて解説していきます。
後継者がいない場合、会社を・事業を解散・清算(いわゆる廃業)することも考えられますが、経営が順調な場合には、会社自体を売却したり、順調な事業を譲渡した上で、会社を解散・清算する方法があります。
これをいわゆるM&A(Merger(合併)& Acquisition(買収))といいます。
M&Aにはつぎのようなメリットとデメリットがあります。
(メリット)
・廃業よりも多額の財産が残せる場合が多い。
・雇用関係、取引関係が引き続き継続される。
(デメリット)
・実行するためには、相応の手間、時間、費用が掛かること(実行段階において、仲介者・アドバイザーの選定、契約締結、事業評価、交渉、譲り受け企業の選定、基本合意書の締結、デューデリジェンス、最終契約締結、クロージング等の流れの中で、法律、税務、労務、会計、技術等の多方面の専門家に依頼する必要がある。)
M&Aを選択するか、廃業を選択するかは、様々なメリット、デメリットを比較検討した上で決めることになります。
M&Aの手法は、主に、株式譲渡、事業譲渡、会社分割の3つがあります。以下、各手法のメリット、デメリットを説明します。
なお、他にも合併、株式引き受け、株式交換、株式移転等がありますが、中小企業の事業承継においては、あまり活用されていません。
株式を第三者に売却する方法です。
(メリット)
・会社自体はそのまま存続し、株主が変わるだけなので、簡易・迅速であること
・原則として、雇用・取引等の契約関係、あるいは、許認可関係がそのまま維持されること
(デメリット)
・会社自体がそのままであることから、会社の負担する偶発債務・簿外債務があれば、それもそのまま引き継ぐ(残る)こと
事業の全部又は一部を第三者に売却する方法です。
(メリット)
・承継対象を取捨選択できること
・株式譲渡の場合と異なり偶発債務・簿外債務の承継を遮断できる点等
(デメリット)
・雇用・取引等の契約関係の承継は各相手方の個別同意が必要であること(ただし、実務上は、主要契約のみ個別同意を得て、残りは一方的な通知等で済ませることも多い。)
・許認可が承継されないこと
会社の事業の一部を切り出して、これを他の会社に売却する手法です。
(メリット)
・譲渡する側での債権者の同意が不要。
・譲受側で資金準備の必要がない。
・包括的に承継を行うため、資産等の移転手続きが簡便。
(デメリット)
・不要な資産も引き継ぐ
・分割した会社に簿外債務があれば、それも引き継ぐ法人は債務も一緒に引き継ぐ。分割した会社に不要な資産もあれば、それも一緒に引き継ぐ可能性がある。
・営業のために行政から許可や認可が必要な業態の場合、原則として承継されない。
一般的なM&Aの流れを簡単に説明します。
なお、以下の説明は、M&Aアドバイザー(M&Aの仲介業者のこと)が関与する場合ですが、必ずM&Aアドバイザーが関与する必要があるわけではありません。
売却先にあてがある場合以外は、売却先を探すために、仲介者・アドバイザーを選定することが一般的です。
仲介者・アドバイザーには、民間のM&A専門業者、金融機関、士業等の専門家などがいます。仲介者・アドバイザーを探す簡便な手段としては、まずは取引先金融機関に相談してみるのもよいでしょう。
仲介者・アドバイザーには、会社の秘密情報を提供することになるため、自社の情報提供を行う前に、最初にNDA(秘密保持契約)だけを締結して、仲介契約・アドバイザリー契約は後にすることも多いです。
トラブル防止のため、遅くともStep⑦までには締結しておきましょう。
複数の仲介者・アドバイザーから話を聞き、業者の選定ができたら、仲介契約又はアドバイザリー契約を締結することになります。
仲介契約は、譲渡側と譲受側の間に立ち、中立公平な立場から助言を行う契約です。
アドバイザリー契約は、譲渡側又は譲受側の一方に立ち、その利益を図る立場から助言を行う契約です。
いずれの契約とするかは、案件の性質によりますが、複数の業者の意見を踏まえたうえで、自身の目的にあった仲介者・アドバイザーを選択することになります。なお、仲介者・アドバイザーの両方をつけることも可能です。
仲介契約、アドバイザー契約を締結した後は、一次的に仲介者、アドバイザーにおいて、関係者との面談、決算書等の各種資料、現地調査等を行い、譲受側の事業を金銭的に評価することになります。
譲受会社と基本合意をした後に、デューデリジェンスをしますので、都合の悪いことも含めて基本的な情報は包み隠さず開示するようにすべきです。
仲介者、アドバイザーは、事業評価をしながら、譲受候補先を選定していきます。もし、譲渡会社のほうで、要望(例:雇用関係の維持、承継資産の選定等)があれば、事前に仲介者、アドバイザーに明確に伝えておくことが重要です。
譲り受け企業の選定が進めば、相手方とある程度具体的な条件の交渉に入っていくことになります。
ある程度具体的な条件が詰まれば、仮置きの対価額、役員、従業員の処遇、守秘義務、デューデリジェンス等を含めたスケジュールなどの基本的な条件をまとめた基本合意書を作成することになります。
基本合意とはいえ、最終契約においても拘束される条項も少なくありませんので、譲渡側においては、仲介者、アドバイザー、あるいは士業専門家等の助言を受けるべきです。
基本合意書を締結した後、譲受会社側において、デューデリジェンスを 実施することになります。
買収先の価値やリスクなどを様々な方面から調査することになります。
中小企業のM&Aでは、手間、時間、費用等の関係から、当該事業との関係で、ビジネス、財務、法務等の最小限のデューデリジェンスしか実施しないこともあります。
デューデリジェンスの結果、双方で売買の意思が固まった場合に、最終契約書を締結します。
ここにおいては、取引スキーム、対価、時期、決済方法、役員・従業員の処遇、前提条件、誓約、表明・保証等が確定的に定められることとなります。譲渡側としては、各表明・保証についてはリスクを遮断する観点から重要な部分であるので、慎重に検討する必要があります。いったん表明・保証をした事項については基本的にはそれと異なる事由は契約違反として、解除、損害賠償、対価の減額等の事由等となります。
契約書が締結される日とクロージング日(対象物の引き渡しと譲渡代金の支払いが行われる日)が異なる場合が多いため、クロージングを行う前提条件等について、合意しておく必要があります。
クロージングとは、最終契約に基づく取引の実行のことで、譲渡対価の決済、株券、会社代表印の引渡しなどM&Aに必要な作業をすべて完了することになります。
クロージングを行う前提条件等について、譲渡会社側は、最終合意契約書で合意した内容をすべて終了しておく必要があります。
具体的には、①経営者の個人的な目的で購入された資産等の経営者による買取、②役員や幹部社員への面談(最終契約書にキーパーソン条項を入れておく場合があります)、③取引先の承認を得る手続き(Change of Control条項がついている取引先)、④不要な業務委託契約等の解除等、があげられます。
以上が、一般的なM&Aの流れになりますが、個々のケースによって、一部手続が省略されたりすることがありますので、ご注意ください。
(執筆者:弁護士 田島直明)
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