港区で相続・遺言相談は
弁護士による高齢者の法的問題サポート
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我が国の企業(会社)の大半が中小企業です。
そして、その大半の企業においては、経営者の高齢化状況にあり、「事業承継」が現実の問題となって来ています。
中小企業の経営者は、会社の株式を所有しているだけでなく、会社や工場の土地、建物を個人が所有していたり、会社の借入金について経営者が連帯保証していることも多いために、会社の事業承継と個人の相続問題が密接に関連することになります。ですから、中小企業の経営者は、早めに事業承継と相続の問題に対処しておくことが重要です。
この「事業承継」には、①オーナー経営者の子どもに承継させる方法(親族間承継)と②親族でない従業員や役員、外部から招いた者に承継させる方法(親族外承継)、そして③第三者に事業を売却等により承継させる方法(M&A)の3つの方法があります。
①の方法が通常ですが、親族に適当な後継者がいない場合、②③の方法によらざるを得ません。②と③については、主として株式譲渡の問題となります。
以下では、後継者がいる場合の事例をもとに、取り得る手段とそれぞれのメリット、デメリットについて紹介したいと思います。
後継者に承継させるタイミングについては、特段法令上の定めはありませんが、少なくとも、現経営者の判断能力に疑義が生じない時期とすることは必要です。
実務上は、事業承継に当たっては、それなりに準備が必要であることから現経営者が引退する数年前(多くは60歳代から70歳代)に行われることが多いです。
そして、現経営者は、後継者の選択にあたっては、事前に十分に関係者(役員、従業員、取引先、金融機関等)との関係にも留意しながら進めていくべきです。事業承継をするうえでは、後継者となる親族に代表取締役の地位だけでなく、株式(社員権)も承継させる必要があります。
承継後の事業遂行が円滑にいくようにするには、できる限り多く(理想は100%)の株式を承継させたほうが良いでしょう。少なくとも会社法上の決議要件との関係で全体の3分の2以上を承継させたいところです。
事業承継を完遂させるには、株式を承継させなくてはなりません。承継させる主な方法としては、売買、贈与、遺贈がありますが、それぞれ次のようなメリット、デメリットがあります。
①売買による承継
(メリット)
・後継者への承継時期を現経営者の任意に選択できる。
・遺留分の問題が生じない(ただし、贈与と評価されない対価であること)。
(デメリット)
・対価いかんによっては後継者の株式取得に係る金銭負担が問題になる。
②贈与による承継
(メリット)
・後継者への承継時期を現経営者の任意に選択できる。
・後継者の株式取得に係る金銭負担が問題にならない。
・一定の条件で納税猶予制度の適用がある。
(デメリット)
・対価次第では、後継者の贈与税に係る金銭負担が重くなる。
・遺留分の問題が生じ得る。
③遺贈による承継
(メリット)
・後継者の株式取得に係る金銭負担が問題にならない。
・贈与と比べて税金(相続税)の負担が相対的に少ない。
・一定の条件で納税猶予制度の適用がある。
(デメリット)
・後継者に承継する時期が不確定であり、現経営者の死亡時(相続開始時)となる。
・遺留分の問題が生じ得る。
③遺贈による承継
(メリット)
・後継者の株式取得に係る金銭負担が問題にならない。
・贈与と比べて税金(相続税)の負担が相対的に少ない。
・一定の条件で納税猶予制度の適用がある。
(デメリット)
・後継者に承継する時期が不確定であり、現経営者の死亡時(相続開始時)となる。
・遺留分の問題が生じ得る。
このような方法の他にも事業承継の方法は考えられますが、どの方法にもメリットデメリットがありますので、会社の規模や親族関係や取引先との関係などの様々な事情を踏まえて、ベストな方法を選択していくことになります。
また、承継に際しては、相続税や贈与税などの税金の問題も出てきますので、弁護士や税理士などの専門家の意見を十分に聞いた上で進めるべきでしょう。
上記の会社のように、親族や取引先や従業員などに株式が分散している場合があります。
このような場合にスムーズに事業承継を行うためには、法的手法を用いない任意の方法と法的手法を用いる方法があります。どのような方法を選択するかは、株主の属性や意向を見極めつつ進めていくことになります。
上記の事例のように親族だけでなく、取引先や従業員等が一定割合の株式を保有している場合には、安定経営の観点から、可能な限り後継者に株式を集約することが必要な場合も少なくありません。
このような場合に株式を集約する方法としては、大きく、任意に譲り受ける方法と、強制的に譲り受ける方法があります。
(1)任意に譲り受ける方法
任意に譲り受ける方法は、各株主と交渉して、株式譲渡契約を締結する方法です。
この方法ができるのであれば、まずは試すべきです。ただし、交渉によらなくてはなりませんので、一部の株主が高い価格を提示してくる場合もあり、そうなった場合に不適正価格で譲り受けると、他の株主との交渉にも影響を与えかねません。交渉相手の順序や交渉方法などは十分に検討し、慎重に進めることが望まれます。
(2)強制的に譲り受ける方法
次のような法的手続をとることにより強制的に譲り受けることができます。
方法1 全部取得条項付種類株式を利用する。
全部取得条項付種類株式とは、会社が株主総会の決議によってその全部を取得することができる種類株式です(会社法108条1項7号)。
この方法は、つぎ流れで行います。
①まずは会社の定款変更(ただし、株主総会の特別決議)を行い、全部取得条項付株式と普通株式を発行できるようにする。
↓
②株主総会決議(ただし、株主総会の特別決議)にて、現存する会社の普通株式を全部取得条項付種類株式に変換する。
↓
③変換された全部取得条項付種類株式全部を会社が取得する。
↓
④新たに普通株式を現経営者と後継者に発行する
方法2 会社法上の売渡請求制度を利用する。
これは、議決権の10分の9以上を直接、間接に有する株主(特別支配株主)がいつでも、一方的な請求により、強制的に、他の株主に対し、その株主を金銭を対価として譲り渡すよう請求する方法です(会社法179条~同条の10)。
ただし、全部取得条項付種類株式を用いる方法よりも高いハードル(要件)が課された方法です。
いずれの方法でも、専門的な手続きが必要となりますので、事前に弁護士等の専門家に相談することをおすすめします。
(執筆者:弁護士 田島直明)
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