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遺言書にはどんなことを書くのか?

相談事例

 私は、現在75歳で元気ですが、今後何があるかわかりませんので、そろそろ、妻や子どもたちのために遺言を残しておきたいと考えています。

 遺言書には法律に定められている事しか書いても法的に意味がないと聞いたことがあります。

 どういった事項であれば法的に意味があるのか、また、法的に意味がないことは書いていけないのかなど教えてください。

 遺言書に書くことで法的効果が生じるものは、民法などの法律に定められている事項に限られています。これを「遺言事項」といいます。

 逆に、法律に定められていない事項を遺言書に記載することもだめではありませんが、法的効果は生じません。このような事項を「付言事項」といいます。

 ではまず、法的な効果が生じる「遺言事項」にはどういったものがあるかみていきましょう。

遺言事項

 遺言事項には以下のものがあります。

1.財産に関する事項
 ①遺産分割方法の指定、遺産分割の禁止(民法908条)
 ②遺贈(包括遺贈、特定遺贈)(民法964条)
 
③祭祀承継者の指定(民法897条1項ただし書)
 ④特別受益の持ち戻し免除(民法903条3項)
 ⑤遺産分割における担保責任に関する別段の意思表示(民法914条)
 ⑥遺留分侵害額請求の負担方法の定め(民法1047条第1項2号ただし書)
 ⑦遺言執行者の指定又は遺言執行者の指定の第三者への委託(民法1006条)
 ⑧遺言執行者の報酬(民法1018条1項ただし書)
 ⑨信託法上の信託の設定(信託法3条2号)
 ⑩生命保険受取人の指定、変更(保険法44条)
 ⑪一般財団法人を設立する意思の表示(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律152条2項)

 2.身分に関する事項
 ①推定相続人の廃除・廃除の取り消し(民法893条、894条2項)
 ②非嫡出子の認知(民法781条2項)
 ③未成年後見人及び未成年後見監督人の指定(民法839条1項、848条)

以下では、上記の各事項を具体的に見ていきます。

1.財産に関する事項

①遺産分割方法の指定、遺産分割の禁止(民法908条)

 遺産分割方法の指定は、例えば、「●●の土地は長男に、△△の土地は二男に」といった遺産分割の方法を定めることです。遺言の中に「こういう分け方をしなさい」という定めをすることができます。

 なお、遺産の分け方を第三者に決めてもらうこともできます。

 また、遺産分割の禁止は、5年を超えない期間を上限として定めることができます。

②遺贈(包括遺贈、特定遺贈)(民法964条)

 「遺贈」とは、遺言によって、他人に無償で財産の全部または一部を与える行為のことをいいます。遺贈の場合は、「〇〇に□□(財産)を相続させる」というように定めるのではなく、「〇〇に□□を遺贈する」というように定めます。

 遺贈の相手方は、相続人に限られません。したがって遺贈であれば、第三者に対しても遺産を譲り渡すことが可能です。

※「特定遺贈」と「包括遺贈」

「遺贈」には、「特定遺贈」と「包括遺贈」があります。

 特定遺贈とは、受遺者に与えられる目的物や財産的利益が特定されている場合の遺贈のことをいいます。

 包括遺贈とは、遺産の全部または一定割合で示された部分を受遺者に与える場合の遺贈のことをいいます。包括遺贈のうち与えられる遺産が全部の場合を「全部包括遺贈」と言い、一部割合部分のみの場合を「割合的包括遺贈」といいます。

③祭祀承継者の指定(民法897条1項ただし書)

 先祖の墓石(遺骨を含む)・墓地・仏壇・位牌等の祭祀財産などの継承者を遺言で指定することができます。遺言で指定されていない場合には、通常、慣習によって承継されます。

④特別受益の持ち戻し免除(民法903条3項)

 「特別受益の持ち戻し」とは、結婚の時や、生計の資本として生前に財産をもらって(贈与を受けて)いた相続人がいる場合に、それを考慮して法定相続分を修正することをいいます。

 遺言で何も書いておかなければ、民法で規定されるとおりに法定相続分に修正が図られる(持ち戻しされる)のですが、遺言で「特別受益の持ち戻しを免除する(相続分から差し引かないでね)」ということを書いておくことができます。

 例えば遺言に「・・ただし、遺言者は、長男●●に対し、独立のための生計の資本として金○○万円を贈与してあるところ、同人の努力にもかかわらず営業不振の状態にあることを考え、相続分の算定に当たっては、右贈与はなかったものとして(相続財産に持戻しをしないで)算定すべきものとする」などと遺言に書くと持戻しが免除されることになります。

⑤遺産分割における担保責任に関する別段の意思表示(民法914条)

 各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負うと規定されています(民法911条)。

 具体的には、遺産分割で財産を取得したものの、その財産に欠陥(瑕疵)があったりしたような場合に、その相続財産を取得した相続人を保護するため、他の相続人に対して、損害賠償請求や解除を求めることができるというものです。

 遺言書は、遺言によって、この相続人の担保責任を指定(変更)することができます。この担保責任の指定(変更)は遺言によって行わなければならず、 それ以外の生前行為で行うことは認められません。指定の具体的内容として、相続人の担保責任を免除、減免することは自由ですが、担保責任を加重する結果、一部の相続人の遺留分を侵害する場合には、遺留分侵害額請求の対象となると解釈されています。

【具体例】

 長男〇、二男△、三男□がいずれも同順位の相続人で、遺産分割によって、長男〇が2000万円の不動産、二男△が1200万円の株、三男□が2000万円の預金現金を取得した。

 後に、長男〇が相続した不動産に欠陥があり、その価値が真実は800万円しかなかった場合、二男△、三男□は、長男〇に対して各400万円(価値の下落分1200万円の法定相続分3分の1)の担保責任を負うのが原則です。つまり、長男〇は、次男△と三男□に対し、各400万円の損害賠償請求を行うことができます。

 ところが、遺言で相続人の担保責任を一切免除すると規定した場合、二男△、三男□は担保責任を負わないため、長男〇は、二男△、三男□に対して一切の請求をすることができません。また、二男△のみが担保責任を負担すると遺言に残した場合、長男〇は二男△に対して400万円の請求をすることができます。

⑥遺留分侵害額請求の負担方法の定め(民法1047条第1項2号ただし書)

 民法上、遺留分侵害額の負担は、時間的に新しい遺贈又は贈与の受遺者又は受贈者から負担することが規定されています。すなわち、「遺贈・死因贈与」→「新しい生前贈与」→「古い生前贈与」の順で、遺留分侵害額を負担する受遺者又は受贈者が決定されていくこととなります。

 これは、被相続人から財産を取得した者の取引の安全を考慮して、遺留分侵害額の負担をなるべく直近の遺贈又は贈与の受遺者又は受贈者に限定するという趣旨です。したがって、遺言で遺留分侵害額の負担の順序の変更を指定した場合でも、その効力は認められません。

 受遺者が複数あるとき、又は受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者又は受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担することになります(民法1047条1項2号本文)。

 すなわち、遺贈された不動産Aが10という価額、遺贈された不動産Bが5という価額の場合には、Aを受贈された者とBを受贈された者が21の割合で遺留分侵害額を負担することになります。遺留分侵害額が600万円の場合には、不動産Aの受遺者が400万円、不動産Bの受遺者が200万円を負担することになります。

 この負担割合については、遺言で異なる定めをすることが認められています(民法1047条1項2号但書)。前記の例で遺言書が財産Aの受遺者にのみ遺留分侵害額を負担させる旨を指定していた場合には、不動産Aの受遺者が600万円を負担します。

⑦遺言執行者の指定又は遺言執行者の指定の第三者への委託(民法1006条)

 「遺言執行者」とは、遺言書に書かれている内容を実際に実現する仕事をする人のことです。この「遺言執行者」を指定することは任意ですが、指定しておくと実際の手続きがとてもスムーズに進むため、指定しておくことをおすすめします。

 また、非嫡出子の認知や相続人の廃除といった行為のように、遺言執行者でなければできない行為があります。遺言にこのような行為が記載されているにもかかわらず、遺言執行者の指定の記載がない場合、家庭裁判所に申し立て、選任してもらわなければなりません。

 なお、遺言書で遺言執行者を指定する場合、相続人の1名や弁護士などの専門家にすることが多いです。

⑧遺言執行者の報酬(民法1018条1項ただし書)

 遺言の中で遺言執行者の報酬を定めることができます。この報酬は遺言者が残した相続財産の中から支払われます。報酬額は遺産総額の1~3%が相場になります。 

⑨信託法上の信託の設定(信託法3条2号)

 遺言書において、信託を設定することができます。これを「遺言信託」といいます。

 信託とは、委託者が、その受託者に対してお金や不動産などの財産を移転し、受託者は委託者が設定した信託目的(例:遺産を運用し、ある人物にその収益を渡してほしい)に従って、受益者のためにその財産(信託財産)の管理や処分などをする制度のことをいいます。

【遺言信託の活用例】

・相続人である妻が、高齢で財産管理が困難な場合に、相続後の将来の生活・扶養・介護・療養等の費用の支払い及び収支の管理を誰かに任せたい。

・相続人が、障がいのある子である場合、相続後の子の生活・扶養・教育・医療・介護・療養等に係る費用の支払い及び収支の管理を誰に任せたい。

⑩生命保険受取人の指定、変更(保険法44条)

 「死亡保険金」については、相続財産とは異なる取り扱いがされます。

 そのため、保険契約で定められた保険金受取人や保険約款の規定を巡ってトラブルになることが少なくありません。遺言書を作成する際には、自己の保険内容についてもしっかりと把握し、必要に応じて保険受取人を変更するなどの対策をしておきましょう。

⑪一般財団法人を設立する意思の表示(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律152条2項)

 遺言によって、自らの意思で一般財団法人を設立することができます。財団法人とは財産そのものに法人格を与え、その運用が主な業務となります。

 遺言によって一般財団法人を設立する場合、遺言に一般財団法人の定款の絶対的記載事項を定めるとともに、相対的又は任意的記載事項を具体的に定めます。

 なお、設立の手続は遺言執行者が行うことになるため、遺言執行者の選任が必要になります。また、設立するには300万円以上の拠出金が必要になり、遺産の中から拠出することになります。

2.身分に関する事項

①推定相続人の廃除・廃除の取り消し(民法893条、894条2項)

 推定相続人が、これまで自分に対して虐待をしたり重大な侮辱を加えたり著しい非行があったとき、推定相続人の廃除をすることができます。

 遺言で廃除する場合、相続開始後、遺言執行者が手続を行うため遺言執行者を選任しなければなりません。

 なお、被相続人はいったんなした推定相続人の廃除を取り消すこともできます。

②非嫡出子の認知(民法781条2項)

 内縁の妻との間の子や、愛人との間の子のように、婚姻関係にない男女の間に生まれた子を「非嫡出子」といいます。

 非嫡出子は父親から認知されることで、法律上の親子関係が成立し、婚姻関係にある男女の間に生まれた子(嫡出子)と同様に相続人になることができます。

 通常、生前に父親自身が認知届を、父親または認知する子の本籍地の市区町村へ提出して認知しますが、遺言で認知することもできます。胎児を認知する遺言もできます。

 遺言で認知する場合、遺言執行者が認知の手続を行うことになるため、遺言執行者の選任が必要になります。

③未成年後見人及び未成年後見監督人の指定(民法839条1項、848条)

 未成年について、親権者が死亡し親権を行うものが誰もいなくなってしまった時は、その未成年者について、未成年後見人が選任されます(民法840条)。その未成年後見人を遺言で指定しておくことができます。

 また、未成年者後見人は1名と法定されておりますので、もし心許ないのならば後見監督人も遺言で追加指定することができます。(民法848条)

 遺言で、未成年後見人及び未成年後見監督人の指定どのようなときに利用するかといいますと、「もし自分が死んだとしても、あの人(元配偶者)には親権は渡したくない」と考えた場合は、遺言で未成年者後見人の指定しておくことで、「あの人(元配偶者)に親権が渡ること」はひとまず阻止することができます。

付言事項

 上記のような民法などの法律に定められている事項以外のことを遺言書に書いてはいけないのか、というとそんなことはありません。法律に定められていないことを遺言書で付言する事項のことを「付言事項」といいます。

 例えば、つぎのようなことを付言事項として書くことがあります。

  •  家族に対する感謝の気持ち
  • 遺言の内容に関する経緯
  • 相続人に対して遺留分を行使しない旨の希望
  • 遺言者の死後の葬儀、埋葬方法
  • 臓器提供の意思表示など

 付言事項は、事実上の効力しかなく法的効力を伴いませんが、遺言書の中で、遺言に関する被相続人の想いを伝えることで、被相続人の意思が尊重されやすくなります。その結果、相続トラブルを回避できたり、円満な相続ができたりするケースも多くなります。遺言書を作成する際には、できるかぎり付言事項を書くことをおすすめします。

 ただし、なんでも書いても良いというわけでもなく、公序良俗に反することや、特定の相続人を非難することや、遺言事項との矛盾する内容を書くと、遺言書全体の信ぴょう性が疑われたり、後に、遺言書の有効性をめぐってトラブルに発展する可能性がありますので、慎重に書くようにしましょう。

【付言事項の記載例】

私の介護のために最後まで尽くしてくれた、長男○○、二男△△に大変感謝しています。財産は多くはないですが、それぞれに分けました。どうか兄弟どうし争わずに最後まで仲良く暮らしてください。

 終活ブームで遺言を書く方が増えてきていますが、きちんとルールに従って作成しなければ、せっかくの遺言書が無効となったり、逆に遺言書が相続トラブルの原因になってしまことがあります。

 実際、遺言書の有効性や遺留分をめぐる相続トラブルが後を絶ちません。遺言は子どもや孫たちが相続トラブルとならないためにするものです。有効、かつ、できるかぎり争いの起こりにくい遺言を準備するのが理想です。

 遺言作成などでお悩みの方は、相続問題に精通した弁護士に相談されてみてはいかがでしょうか。

(執筆者:弁護士 田島直明)

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