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相続人が行方不明で連絡が取れない場合はどうする?

相談事例

 先日、私の兄が亡くなりました。

 兄は独身で両親も既に亡くなっています。そのため、相続人は、私を含む兄弟4人なのですが、そのうちの1人が若いころに海外に行ってしまい、その後行方不明になっています。

 これから兄弟間で遺産分割をしたいのですが、行方不明の相続人がいる場合はどのようにすれば良いのでしょうか。行方不明の相続人以外で遺産分割してはいけないのでしょうか?

 遺産分割を進めていこうとしたときに、相続人の一部が行方不明になっているというケースは少なくありません。

 ここでいう「相続人の行方不明」とは、戸籍や住民票では相続人の存在(生存)の確認が取れるものの、実際にはその住所に居住しておらず、転居先・勤務先など、現在の居所が不明であって、色々と調査を尽くしたがその所在がわからない状況のことです。
 所在や連絡先は分かっているが連絡が取れない、没交渉となってしまっている場合は行方不明にはあたりません。

 共同相続人の一部を除外してなされた遺産分割協議は無効になりますので、行方不明の相続人を無視して遺産分割を進めることはできません。

 そこで、このページでは、行方不明の相続人がいる場合の遺産分割の進め方について解説します。

1.失踪宣告

 失踪宣告とは、利害関係人が家庭裁判所に申立てをすることによって、一定期間生死不明の状態にある人に対して、法律上、死亡したものとみなす効果を生じさせる手続きです。

 7年以上行方不明の人や、飛行機事故、難破などの緊急的な危難に巻き込まれて行方不明となり1年以上が経過した人については、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てることができます。

 失踪宣告には、2つの種類があります。

①普通失踪
 普通失踪とは、不在者についてその生死が7年間明らかでないときをいいます。
 普通失踪は、不在者の生死が不明になってから7年間が満了した日に死亡したものとみなされます。

②特別失踪
 特別失踪とは、戦争、船舶の沈没、震災などの死亡の原因となる危難に遭遇し、その危難が去った後、その生死が1年間明らかでないときをいいます。
 特別失踪は、戦争、船舶の沈没、震災などの死亡の原因となる危難が去った日に死亡したものとみなされます。

  家庭裁判所での審理の結果、失踪宣告の審判が下され、失踪宣告が確定した場合、行方不明者が死亡したものとみなされ、行方不明者を被相続人として相続が開始します。

 そのため、本来の被相続人の相続手続きを行うには、行方不明者の相続人を参加させて遺産分割協議を進めていくことになります(行方不明者に相続人がいない場合は残った相続人で進めていくことになります)。

 なお、失踪宣告の確定後に失踪者が生存すること、又は異なる時期で死亡したことが判明した場合には、本人または利害関係人は失踪宣告の取消申立をすることができます。

【失踪宣告の流れ】期間 半年~約1年

① 失踪宣告申立

② 家庭裁判所における審理

③ 失踪に関する届け出の催告の公告
(届出期間 普通失踪の場合3カ月以上、特別失踪の場合1カ月以上) 

④ 失踪宣告の審判
(申立てが却下された場合、申立人は即時抗告可) 

⑤ 家庭裁判所による失踪宣告の公告、申立人による市区町村に対する失踪届の提出

2.不在者財産管理人の選任

(1)不在者管理人の選任手続き

 行方不明の相続人の生死不明の状態が7年未満である場合、生存していることは明らかだけれども行方不明で所在がわからないという場合などには、上記の失踪宣告はできません。

 そこで、家庭裁判所に対して行方不明の相続人について不在者財産管理人の選任申立を検討することになります。

 不在者財産管理人は、被相続人の遺産分割を行いたいけれども、共同相続人の中に不在者がいるため遺産分割が行えないなどの場合に、当該不在者に代わって財産を管理、保存、処分をする人です。

 利害関係人である共同相続人は、不在者の住所地または居所地の家庭裁判所に対して、不在者財産管理人選任の申立てを行うことによって、裁判所が不在者財産管理人を選任します。

 その後、選任された不在者財産管理人が遺産分割に参加することになります。

【不在者財産管理人選任までの流れ】期間 数カ月

① 家庭裁判所に対する不在者財産管理人選任申立

② 家庭裁判所における不在者財産管理人選任の審理 

③ 不在者財産管理人の選定、打診、内諾

④ 不在者財産管理人の選任審判 

ポイント① 不在者財産管理人は自由に選べません。 

 不在者財産管理人は、利害関係人の請求に基づいて、家庭裁判所が審理をして、適当と考える不在者財産管理人を選任します。

 利害関係人は選任申立時に候補者を立てることはできますが、選ぶ権限は家庭裁判所にあるため、最終的に見ず知らずの第三者が選ばれることもあります。

 例えば、候補者と不在者が共に共同相続人になる場合には遺産分割協議で利益相反(一方の利益がもう一方の損失に繋がる状態)の関係になるため、利害関係人が希望する候補者は選任されないことがあります。このような場合、公平性を保つため、弁護士や司法書士などの第三者たる専門家が選任されることが多いです。

ポイント② 財産管理にかかる費用が申立人負担になることがあります。

 不在者財産管理人の選任を申し立てる時は、指定された申立手数料(印紙代、郵便切手代)と合わせて「予納金」が必要になる場合があります。

 管理業務を行うための必要経費は、不在者本人の財産から支払われると決められています。

 不在者本人の財産が少なく、管理経費をまかないきれないケースでは、不在者財産管理人の選任を申し立てる人があらかじめ裁判所にお金を預けておかなくてはなりません。この時に預けるお金が「予納金」です。

 また不在者財産管理人は、業務終了に際し、裁判所に請求することで報酬を得ることができます。

 報酬額は様々な事情を考慮して家庭裁判所を決めますが、不在者の財産では支払えない場合、申立人が納めた予納金から支払われます。

 なお、管理経費と管理人報酬を支払い終えた段階で予納金に余りがある場合、選任を申立をした人に返還されます。

 予納金は、選任された不在者財産管理人が今後の財産管理業務を行っていくための必要経費です。予納金の金額は、家庭裁判所が事案の内容や想定される業務内容などを踏まえて判断しますが、50万円前後が目安といわれています。

 いわゆる、帰来時弁済型(※詳細は後述のとおり。)の遺産分割協議が予測され、業務が限定的な事案であれば、予納金がさらに定額になる傾向にあります。

(2)不在者財産管理人選任後の遺産分割手続

① 遺産分割するには裁判所の許可が必要

 不在者財産管理人が選任された場合には、不在者財産管理人が遺産分割協議に参加して遺産分割手続きを進めていきます。

 ただし、不在者財産管理人の権限は、主として、不在者のために財産の管理・保存にありますので、遺産分割のように不在者の財産を処分する行為をする場合には、裁判所に許可(権限外行為許可)を求める必要があります。

② 遺産分割までには時間がかかる

 不在者財産管理人が裁判所に権限外行為許可の申立てをする際には、遺産分割協議書(案)を添付する必要があります。

 不在者の法定相続分が確保されていないなど不在者が不利益を受けるような内容の遺産分割協議内容であった場合には、裁判所の許可が得られない場合がありますので注意が必要です。

 遺産分割や相続財産の売却に必要な「権限外行為許可」を得るためには数カ月~半年以上の時間がかかることがありますので、不在者財産管理人が参加する遺産分割では、半年以上手続きがストップしてしまう可能性もあります。 

 そのため、相続税の申告や分割前の遺産の管理など、権限外行為許可が下りるまでの相続財産に係る扱いにも注意が必要です。

※  帰来時弁済型遺産分割とは?

 不在者財産管理人が入った遺産分割協議では、いわゆる「帰来時弁済型の遺産分割協議」をすることがあります。

 帰来時弁済型の遺産分割協議とは、遺産分割協議により不在者が取得する財産について他の共同相続人が保管をし、不在者の帰来時に保管者が不在者(帰来者)に渡すことを約束する内容の協議を成立させるものです。

 例えば、帰来時弁済型の遺産分割協議では、つぎのような定め方をします。

【遺産分割条項例】

 相続人●●は、不在者△△に対し、遺産を取得する代償として、金〇〇万円を支払うものとする。ただし、相続人●●は、不在者△△に対して、不在者△△が帰来するまで、前記金員を保管し、不在者△△が帰来した場合、速やかに支払うものとする。

 不在者財産管理人を選任して遺産分割協議を行う場合には、不在者が不利益を受けないようにするため、不在者の民法が定める法定相続分を確保する内容の遺産分割が原則です。

 しかし、そのような内容の遺産分割協議を成立させた場合、不在者財産管理人が不在者が現れるまで遺産分割で取得した不在者の財産を管理していかなければなりません。

 いつまでも不在者が戻ってこない場合には、不在者財産管理人の業務も長期間に及ぶことになり負担が大きくなるとともに、不在者財産管理人に支払う報酬のために不在者の管理財産が目減りしていくことにもなります。

 そこで、実務では、相続人の中に不在者がいる場合の遺産分割協議の特別な方法として「帰来時弁済型」と呼ばれる遺産分割協議をすることがあります。

 ただし、この方法は、不在者財産管理人の手を離れ、不在者の取得分を他の共同相続人が保管することになるので、不在者にとって財産散逸のリスクもあります。

 そこで、実務では、不在者の取得分が大きくないことを前提に、不在者の帰来の可能性、保管者となる共同相続人の立場や資力などを踏まえて許容されています。

 不在者の取得分が少額の現金(100万円以内)であれば裁判所の許可が得られやすい傾向にあります。

3.専門家に相談するのがおすすめ

 行方不明の相続人がいる場合には、失踪宣告、不在者財産管理人の選任手続などの手続きを検討することになります。

 なお、被相続人が亡くなる前の時点で、相続人の中に行方不明者がいることが判明している場合には、遺言書を残しておけば失踪宣告、不在者財産管理人の選任などの手続きは不要になりますので、相続人の負担を軽減することができます。

 失踪宣告、不在者財産管理人の選任のいずれの手続きをとる場合でも、後に控える遺産分割を解決するため、適切な準備を行い、スムーズに手続きを進めていく必要があります。そのためにも専門家である弁護士のサポートが重要になります。

 行方不明や音信不通の相続人がいる場合には、相続問題に詳しい弁護士にご相談することをおすすめします。

(執筆者:弁護士 田島直明)

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