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相続問題を解決する際に考えておかなくてはならないのが相続税です。
基礎控除の範囲内であれば相続税は発生しませんが、遺産分割の取り決めをした後に相続税が課税されることが分かり、想定外に損をすることもあります。
全てのケースで相続税が課されるわけではありませんが、相続や遺産分割を安心して解決するためには、相続税について基本的なルールを知っておくに越したことはありません。
そこで、ここでは相続税の計算手順と申告・納付に関する基本的なルールについて説明します。
相続財産を取得したすべてのものに係る相続税の財産から、非課税財産と債務・葬式費用の控除を行って、課税価格の合計額を計算します。
課税価格の合計額
=相続財産 + みなし相続財産 + 3年以内の贈与財産 - 非課税財産 - 債務 - 葬儀費用
課税価格の合計額から遺産に係る基礎控除額を控除して、課税遺産総額を計算します。
課税遺産総額 = 課税価格の合計-基礎控除(3000万+600万円×法定相続人の数)
課税遺産総額を、法定相続人が「法定相続人の数に応じた法定相続分」により取得したものと仮定して分割します。この法定相続人は、法定相続人の数の計算と同様に養子と放棄についての制限がかかっていることに注意が必要です。
各相続人の相続金額 = 課税遺産総額 × 法定相続の割合
分割後の課税遺産額に対して、相続税の速算表を用いて各相続人の相続税額を計算します。
各相続人の相続税額 = 分割後の課税遺産額 × 税率 - 控除額
各相続人の相続税額を合計して算出した金額を相続税の総額をいいます。
相続税の総額 = 各相続人の相続税額の合計
相続税の総額を、各相続人が実際に取得した課税価格に応じて次の算式により按分します。この金額が各相続人の納付税額の基礎となる金額となります。
各相続人の納付税額
=相続税の総額 × 各相続人が実際に取得した課税価格 / 課税価格の合計額 + 各加算 - 各控除
これまでの計算過程では、相続財産を取得した各相続人の個別事情は一切考慮されていませんでした。しかし、例えば幼児のように親の遺産に依存しなければ生活が困難な者と、独立して生計を営んでいる者で税負担が一緒というのも問題があります。
そこで、相続財産を取得した者の様々な事情等を考慮して、下記に挙げるとおり、各相続人の納税額の基礎となる金額に一定の加算・控除を行うこととしているのです。
【原則的取り扱い】
次のいずれにも該当しない者は、相続財産に対する生計の依存割合が低いと考えられますので、各相続人の納税額が2割加算され1.2倍になります。具体的な2割加算の対象者は兄弟姉妹、受遺者である友人・代襲相続人でない孫などです。
●2割加算とならない人
・被相続人の1親等の血族(子、親)
・子の代襲相続人(再代襲による曾孫等を含む)
・配偶者
●孫等が養子になっている場合の取り扱い
被相続人の直系卑属が養子となっている場合、養子は1親等の血族ですが、例外的に2割加算の対象になります。
具体的には孫を養子としているケースなどが2割加算の対象になります。しかし、養子である孫が同時に代襲相続人になっている場合(二重身分)は、2割加算の対象外となります。
生前贈与加算によって相続財産に加算された贈与財産がある者で、その贈与時に納付した贈与税額がある場合、そのままだと二重に課税されてしまうため、相続税の計算上その贈与税額を相続税額から控除することになっています。
ただし、相続税額から贈与税額を控除しきれない場合でも、その控除しきれない金額について還付を受けることはできません。
③配偶者の税額軽減(税額控除)
配偶者は被相続人の財産形成に貢献しているなどの理由から、課税価格の合計のうち、配偶者の法定相続分(1億6,000万円に満たない場合は、1億6,000万円)に相当する部分の相続税額が軽減されます。
【軽減税の計算】
配偶者については、次の算式により計算した金額を相続税額から控除します。
配偶者の税額減額
=相続税の総額 × 次の①と②のうちいずれか少ない金額 / 課税価格の合計額
①・・・次のAとBのうち、いずれか多い金額
A:課税価格の合計額×配偶者の法定相続分
B:1億6000万円
②・・・配偶者が実際に取得した相続財産(生前贈与加算された贈与財産を含む)の課税価格
上記の結果、配偶者は次のいずれかに該当する場合、原則として納付税額がゼロになります。
●対象となる配偶者
相続開始時に被相続人と婚姻していれば、特に制限なく対象になります。したがって、放棄をしている配偶者も対象になりますが、内縁関係である者は対象になりません。
●対象とならない相続財産
次の相続財産は、配偶者の税額軽減の対象となりません。
④その他の税額控除
【未成年者控除】
未成年者である相続人(放棄があった場合には、その放棄がなかった場合の相続人)については、相続開始時から20歳になるまでの年数(1年未満の端数は切り上げ)に10万円を掛けて計算した金額を相続税額から控除します。
【障害者控除】
障害者である相続人(放棄があった場合には、その放棄がなかった場合の相続人)については、相続開始時から85歳になるまでの年数(1年未満の端数は切り上げ)に10万円(特別障害者の場合には20万円)を掛けて計算した金額を相続税額から控除します。
【相次相続控除】
相次いで相続が起こった場合には、その度に相続税が課税され税負担が過度に重くなる可能性がありますので、このような場合の税負担を軽減するための制度です。
具体的には、今回の相続(これを第二次相続という)の開始前10年以内に開始した相続(これを第一次相続という)により、第二次相続に係る被相続人が相続財産を取得して、相続税を納付している場合に適用があります。
【外国税額控除】
相続財産に国外にある財産が含まれている場合、国外でも相続税が課税される可能性があります。しかし、原則として日本でも国外財産に相続税が課税されるため、国際間の二重課税が生じてしまいます。これを調整するため、日本の相続税から外国の相続税を控除することにしています。
【相続時精算課税制度による贈与税額の控除】
相続時精算課税制度の適用を受けた贈与について納付した贈与税がある場合、その贈与者が被相続人となっている相続にかかる相続税から、その贈与税を控除します。
なお、控除しきれない金額がある場合には、その控除しきれない金額は還付されます。
上記の相続税額の2割加算から相続時精算課税制度による贈与税額の控除までは、記載の順序に従って計算を進めていきます。
途中、該当しない項目がある場合には、飛ばして先に進み、相続時精算課税制度による贈与税額の控除が終了した段階で、相続税の計算はすべて完了することになります。
■具体例
被相続人 | 夫 |
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相続人 | 妻と子供2人 |
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相続財産 | 土地(評価額)3000万円、建物(評価額)1000万円、預金・現金1000万円、 ローン500万円、葬儀費用200万円 |
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①課税価格の合計額
土地3000万円+建物1000万円+預金・現金1000万円-ローン500万円-葬儀費用200万円=課税価格4300万円
②基礎控除額
3000万+600×3人(法定相続人の数)=4800万円
①課税価格の合計額-②基礎控除額=-500万円になるので、基礎控除内となるため、相続税の申告や納税は必要がありません。
こういった方法を知っておくと、簡単に相続税の申告が必要かどうか把握することができます。
(1)相続税の納付義務者と課税財産の範囲
相続税または遺贈により財産を取得した者は、相続税の納税義務者になります。相続税の納税義務者は、原則として自然人たる個人でえすが、財産を取得した者が代表者または管理者の定めのある人格のない社団や財団の場合は、個人とみなされて納税義務を負います。
(2)相続税の申告期限
① 申告書の提出義務者
課税価格の合計額が基礎控除額を超える場合で、配偶者の税額軽減の適用前において相続税額が発生する相続人、受遺者および財産の分与を受けた者は、相続税の申告書を提出しなければなりません。
また、次に掲げる規定の適用を受けるためには、申告が必要とされています。
なお、申告書の提出期限までに財産が未分割の場合は、法定相続分で分割したものとして課税価格を計算し申告します。
②申告書の提出期限
相続税の申告書は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内に提出しなければなりません。
③過少申告の場合(修正申告)
財産の計上漏れがあるなど申告した税額に不足がある場合は、税務署長 からの更正があるまでは修正申告書を提出することができます。
④過大申告の場合
計算の誤り等により申告した税額が過大である場合、法定申告期限から1年以内に限り税務署長に更正の請求をすることができます。
⑤期限後申告
原則:その期限後申告書を提出した日が納期限となります。
特殊:未分割財産が分割された場合などは、原則同様、その期限後申告書を提出した日が納期限となりますが、納期限までの延滞税は課されません。
⑥準確定申告
相続が開始されると、相続税の申告書を提出する前に、被相続人の所得税の確定申告が必要になります。これを準確定申告といい、被相続人の相続人は、相続の開始があったこと知った日の翌日から起算して4カ月を経過した日の前日までに、被相続人の所得税の順確定申告を提出しなくてはなりません。
(3)相続税の納付
①納税方法の種類
税金は金銭による一括納付が原則ですが、相続税は他の税目とは異なり財産を課税客体として課税するものですので、その納付が困難な場合も考えられます。
そこで年賦による納税(延納)や相続により取得した財産による納税(物納)が一定要件のもとに認められます。
②納付期限
申告または更正、決定により、納付すべきことが確定した相続税額は納付期限までに国に納付しなければなりません。
なお、相続税を納付期限までに納付しなかった場合には、法定納付期限の翌日から納付した日までの日数に応じて、未納の税額につき延滞税を納付しなければなりません。
2019年には、40年ぶりに相続法が改正されたほか、相続税法も毎年のように見直しがされています。
遺産分割といっても、ただ遺産を分けるだけでなく、登記や相続税の問題までクリアできてこそ本当の解決といえます。
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(執筆者:弁護士 田島直明)
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