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審判手続は、通常一人の審判官(裁判官)が担当し、調停委員は担当しません。また審判手続では、通常、審判期日を決め、その日に当事者が出頭します。
審判手続に移行する前の調停段階で当事者双方の主張がすでに提出され、意見の対立点などが明確になっていることも多いです。そこで、審判手続では、従前の当事者双方の主張と争点の整理を行うとともに、裁判所が争点を判断するためにどのような事実の調査が必要なのかの確認から始めることが多いでしょう。
そして、争点整理をした後、必要に応じて、事実の調査のために、当事者から追加の主張立証や、当事者が期日において裁判官に対して口頭で陳述する審問、家庭裁判所調査官による調査、調査嘱託などが行われます。
審判では最終的に裁判官が遺産分割方法を決めますが、審判手続の中でも当事者同士の話し合いをまったく行わないわけではありません。審判でも随時、話し合いによる和解の機会が設けられます。もし審判において当事者同士の和解が成立した場合は、調停が成立したものとみなされ、審判は終了となります。
なお、遺産分割審判の期日の回数や期間についても特に制限はなく、それぞれの相続人の主張内容や争点が整理できるまで何度でも期日が開かれます。争点が多岐に及ぶケースなどでは、審判が出るまでに1年以上かかるケースもあります。
遺産分割調停が長期間続いた後、審判に移行して、さらに遺産分割審判も長引いたケースでは、調停と審判の期間を全部合わせると2~3年以上の長期に及ぶこともあります。
審理が終結すると、裁判所が審判する日が定めます。審理の終結後は、新たな主張や資料の提出はできません。
審判期日には、裁判官は、遺産をどのように分けるかについての審判を下します。
審判によって、相続人の一部が同意しなくても遺産分割が決定されることになります。
審判が行われると、後日、家庭裁判所から審判書が送られてきます。審判書には、遺産分割の内容や、意見の対立があった場合には、争点に対する判断とその理由等が示されます。
審判書が当事者に送達後2週間で審判内容が確定しますが、審判が確定したら、審判書と確定証明書をもって、各種の相続手続きを進めることができます。確定証明書は、家庭裁判所に申請すれば、発行してもらうことができます。
審判の内容に不服がある場合には、即時抗告という不服申立をすることができます。
即時抗告をする場合には、高等裁判所宛の即時抗告申立書を作成して、審判を下した家庭裁判所に提出します。このとき、原審の審判書を受け取ってから14日以内に抗告申立をしないといけないので注意が必要です。
即時抗告の申立てには、手数料として収入印紙1800円分が必要です。また、必要書類は抗告状(即時抗告申立書)1通と、即時抗告の理由を証明する証拠書類です
抗告状を提出すると、しばらくして高等裁判所の担当部から、即時抗告事件についての連絡があります。
抗告審でも、追加の主張書面や証拠などを提出して、最終的に高等裁判所によって決定を出してもらうことになります。
高等裁判所が、抗告に正当な理由があると判断した場合には、審判を取り消し、高等裁判所が審判に代わる判決を下します。
この高等裁判所の判決にも不服がある場合は、さらに最高裁判所へ抗告をすることができます。しかし遺産分割の場合、最高裁判所へ舞台を移したところで、結果が変わることはほとんど期待できないでしょう。
また、即時抗告について留意したい点ですが、審判の結果が自分にとって不利であるために即時抗告を行っても、即時抗告によって審判の結果よりもさらに不利な結果がもたらされる場合があります。
遺産分割協議から即時抗告までの流れを簡単にまとめると以下のとおりです。
遺産分割調停や審判手続きを利用する場合には、弁護士に依頼すると有利になる事は少なくありません。
遺産分割審判は、裁判官が審理を担当しますので、裁判官にこちらの言い分を理解してもらうよう主張を整理したり、適切な証拠を提出しなければなりません。また、審判は、訴訟に類似した手続きなので、プロである弁護士に任せることは有効です。
特に、他の相続人(対立する相続人)が弁護士をつけているのに、自分がつけていないとなると、状況は不利になってしまう可能性もあります。
そのため遺産分割審判になる場合には、一度は遺産相続問題に精通した弁護士に相談をしておくべきです。またできれば審判手続きを代理を依頼することをおすすめします。
弁護士がついていれば間違った主張をしたり、不利な主張や証拠を出したりすることを避けられますし、適切にこちらの主張を展開して、必要な証拠を提出してくれるので、自分の主張が通りやすくなる可能性が高くなります。
遺産分割審判になる場合にはまずは一度、相続問題に強い弁護士に相談を受けてみると良いでしょう。
(執筆者:弁護士 田島直明)
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