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墓じまいを巡る法的トラブルと解決方法

― 親族・寺院・代行業者とのトラブル別に弁護士が解説 ―
ご相談事例

先祖代々のお墓が郷里にありますが、私も子どもたちも都市部で暮らしており、墓参りや管理が年々難しくなってきました。そこで、墓じまいをして、遺骨を自宅近くの永代供養墓に移したいと考えています。

ところが、親族の一人が「先祖代々の墓を勝手に処分するのは許さない」と強く反対しています。また、菩提寺に相談したところ、住職から離檀料として200万円を提示されました。

墓じまいを自分で行うのは大変なので、代行業者に任せることも考えていますが、どのような点に注意すればよいのでしょうか。

 少子高齢化や核家族化を背景に、墓じまい(改葬)を選択する方が増えています。

厚生労働省の「衛生行政報告例」によれば、令和5年度の改葬件数は全国で16万6886件と、10年前(8万8397件)の2倍近くに達し、令和6年度には17万6105件と過去最多を更新しています。

 一方で、墓じまいを巡っては、①親族とのトラブル、②寺院とのトラブル(離檀料など)、③墓じまい代行サービスにまつわるトラブルが数多く発生しています。

 そこで、このページでは墓じまいを巡る法的トラブルの類型と、その解決方法について解説します。

1.墓じまいの法的な位置づけと必要な手続

(1) 墓じまい・改葬とは

 墓じまいとは、墓石を撤去して墓地の区画を更地に戻し、墓地の使用権を墓地管理者に返還することをいいます。

取り出した遺骨は、別のお墓や永代供養墓、納骨堂、樹木葬などに移すのが一般的で、この遺骨の移転を法律上「改葬」といいます(墓地、埋葬等に関する法律〔以下「墓埋法」といいます〕2条3項)。

改葬を行うには、現在の墓地が所在する市区町村長の許可(改葬許可)が必要です(墓埋法5条)。

許可申請の際には、原則として現在の墓地管理者による埋蔵(収蔵)の証明が必要とされています(墓埋法施行規則2条2項)。許可を得ずに遺骨を移すと刑事罰の対象となり得ます(墓埋法21条)ので、必ず法定の手続を踏む必要があります。

墓じまいの一般的な流れ

  • 1
    親族との協議・合意形成
  • 2
    墓地管理者(寺院・霊園)への相談、新しい納骨先の確保(受入証明書の取得)
  • 3
    市区町村への改葬許可申請(埋蔵証明書等を添付)・改葬許可証の交付
  • 4
    閉眼供養(魂抜き)・遺骨の取り出し
  • 5
    墓石の解体・撤去、区画の返還
  • 6
    新しい納骨先への納骨
(2) お墓は誰のものか ― 祭祀財産と祭祀承継者(民法897条)

 墓地の使用権や墓石は、法律上「祭祀財産」と呼ばれ、通常の相続財産とは区別されます。祭祀財産は遺産分割の対象とはならず、「祖先の祭祀を主宰すべき者」(祭祀承継者)が単独で承継します(民法897条)。

祭祀承継者は、①被相続人の指定があればその者、②指定がなければ慣習に従い、③慣習が明らかでないときは家庭裁判所が定める、という順序で決まります。

墓じまいを行う法的な権限を持つのは、この祭祀承継者です。逆に言えば、祭祀承継者でない親族には、墓じまいを止める法律上の権限はありません。もっとも、後述のとおり、法的に可能であることと、円満に進められることとは別の問題です。

2.親族とのトラブル

(1) よくあるトラブル事例
  • 「先祖代々の墓を処分するなどとんでもない」と親族が反対する
  • 事後に知った親族から「墓参りに行ったらお墓がなくなっていた」と抗議される
  • 墓石の撤去費用や離檀料、新しい納骨先の費用を誰が負担するかで揉める
  • そもそも誰が祭祀承継者なのかがはっきりせず、話が進まない
(2) 法的な考え方

 前述のとおり、墓じまいの決定権は祭祀承継者にあり、親族全員の同意は法律上の要件ではありません。したがって、反対する親族がいても、祭祀承継者は墓じまいを進めることが法的には可能です。

 
 しかし、お墓には親族の心のよりどころという側面があり、法律論だけで押し切れば、その後の親族関係に深刻な亀裂を生みかねません。
 
 また、誰が祭祀承継者かについて争いがある場合には、家庭裁判所に祭祀財産承継者指定の調停・審判を申し立てて決めることになります。家庭裁判所は、承継候補者と被相続人との身分関係や生活関係、祭祀主宰の意思・能力その他一切の事情を総合考慮して判断するものとされています(東京高裁平成18年4月19日決定参照)。
 
(3) 解決方法
事前の説明と協議を尽くす

 墓じまいを検討する理由(遠方であること、承継者がいないこと、費用負担など)と、遺骨の新しい供養先を具体的に示して説明しましょう。

改葬後も墓参できる永代供養墓などを選ぶと、親族の理解を得やすくなります。

費用分担をあらかじめ取り決める

 撤去費用・離檀料・新しい納骨先の費用について、口頭ではなく書面で合意しておくと、後日の紛争を防げます。なお、自治体によっては墓石の撤去費用に対する補助金制度を設けている場合がありますので、お墓のある自治体に確認してみるとよいでしょう。

協議がまとまらない場合

 弁護士が代理人・調整役として親族間の話し合いに関与する方法や、祭祀承継者の指定について家庭裁判所の調停・審判を利用する方法があります。

3.寺院とのトラブル ( 離檀料 )

(1) よくあるトラブル事例

 寺院墓地の墓じまいでは、檀家をやめる(離檀する)ことに伴い、寺院から高額な「離檀料」などを請求されるトラブルが目立ちます。

国民生活センターには、「離檀料として300万円を請求された」「過去帳に8人の名前があるので700万円かかると言われた」といった相談が寄せられているとのことです。また、離檀料を支払わない限り、改葬許可申請に必要な埋蔵証明書を発行しないと言われるケースや、これまでの墓地管理料の未払い分の一括払いを求められるケースも見られます。

墓じまいは、寺院にとって檀家が減り、収入の減少に直結する重要な問題でもあります。トラブルの背景にはこうした寺院側の事情もあることを理解した上で、長年の供養に対する感謝の気持ちをもちつつ、感情的な対立を避けて話し合いを進めることが円満な解決のために大切です。

 
(2) 離檀料の法的性質 ― 原則として支払義務はない
 「離檀料」とは、檀家をやめる際に寺院に渡すお布施のことですが、法律上の用語ではありません。墓地使用契約や寺院規則に明確な定めがない限り、離檀料の支払いは法的義務ではなく、あくまで任意のお布施(贈与)です。
 
 したがって、寺院から一方的に高額な離檀料を請求されても、これに応じる法的義務は原則としてありません。
 
 なお、離檀料の相場は概ね数万円~30万円程度とされています。これまでの供養に対する感謝の気持ちとして、気持ちよく離檀するために相場の範囲内で支払うという選択も考えられます。
 
 また、墓地使用の開始時に一括で支払った永代供養料は、一般に墓地使用権の設定に対する対価と考えられているため、墓じまいに際して返還を求めることは原則として難しいとされています。    
 
 もっとも、墓地使用契約・規則の内容や個別の事情によって結論が異なる余地はありますので、返還を求めたい場合には弁護士にご相談ください。
 
(3) 埋蔵証明書を発行してもらえない場合

 改葬許可申請には墓地管理者による埋蔵証明が原則として必要ですが(墓埋法施行規則2条2項)、寺院が証明書の発行を拒んだ場合でも、それだけで改葬が不可能になるわけではありません。

市区町村によっては、申請者側の資料等により埋蔵の事実が確認できれば許可を出す運用も行われていますので、まずは市区町村の担当窓口に相談してみてください。

 

(4) 解決方法
感謝を伝えた上で丁寧に事情を説明する

 長年の供養への謝意を示し、承継者がいないなどやむを得ない事情を丁寧に伝えることで、円満に離檀できるケースが大半です。

高額請求には即答しない

 金額の根拠を確認し、その場で支払いを約束しないことが重要です。 

宗派の本山に相談する

 菩提寺との話し合いが難航する場合、その宗派の本山に相談するという方法もあります。

弁護士に交渉を依頼する

 弁護士が代理人として交渉することで、法的義務の有無を前提とした冷静な話し合いが可能になります。すでに支払ってしまった場合でも、事情によっては返還を請求できる余地があります。

4.墓じまい代行サービスにまつわるトラブル

(1) よくあるトラブル事例

 近年、墓じまいの手続を代行する業者が増えていますが、次のようなトラブルが見られます。 

  • 業務範囲の誤解

 行政書士が代行できるのは改葬許可申請などの書類作成であり、石材店が行うのは撤去工事です。「全部任せたつもり」だったのに、実際には一部しか対応されていなかったというトラブルがあります。

 

  • 高額請求・追加請求

 契約後に「基礎が想定より深かった」などの理由で追加費用を請求されるケースがあります。

 

  • 指定石材店制度

 霊園や寺院によっては指定石材店以外に工事を依頼できず、相見積もりが取れないため、相場より2~5割程度高額になる傾向が指摘されています。

 

  • 遺骨の取扱い

 取り出した遺骨の管理・運搬がずさんで、紛失や損傷が生じるおそれもあります。

 

(2) 法的な注意点 ― 業者による交渉代行は「非弁行為」のおそれ

 代行業者が行えるのは、墓石の解体・撤去、遺骨の取り出し・移送、閉眼供養や納骨の手配、必要書類の案内といった作業にとどまります。

 まず、改葬許可申請など官公署に提出する書類の作成・申請代行を業として行えるのは、行政書士(または弁護士)に限られます(行政書士法1条の2、19条)。無資格の業者による代行は刑罰の対象となり得ます(同法21条)。

 さらに、弁護士でない者が、報酬を得る目的で、離檀料を請求された場合の交渉など紛争性のある交渉を代理することは、弁護士法72条が禁止する「非弁行為」に該当し、2年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金の対象となります(同法77条)。「寺院との交渉もすべてお任せください」とうたう業者には注意が必要です。

 なお、家族・親族への説得や交渉を業者任せにすることは、かえって関係をこじらせる原因になります。親族間の話し合いは当事者間で行い、まとまらない場合には弁護士に相談・依頼するのが適切です。

 

(3) 解決方法
契約前に業務範囲と総額を書面で確認する 

 見積書に撤去工事費・書類代行費・閉眼供養等の内訳が明記されているかを確認し、追加費用が発生する条件も書面化しておきましょう。

複数の業者から見積もりを取る

 あわせて、墓地管理者に指定石材店制度の有無を確認しましょう。 

トラブルになった場合

 契約書・見積書等の資料を保管した上で、消費生活センター(局番なしの188)に相談できます。

 なお、訪問販売や電話勧誘販売で契約した場合には、特定商取引法に基づくクーリング・オフ(8日間)ができる場合もあります。

 
損害の回復を求める場合

 業者に対して支払済みの費用の返還や損害賠償を請求する場合には、弁護士に相談するのが適切です。

5.専門家に相談するのがおすすめ

 墓じまいは、祭祀承継(民法)、改葬許可(墓埋法)、寺院との関係、業者との契約と、複数の法律問題が絡み合う手続です。

 また、親族の反対や高額な離檀料の請求など、紛争性のある問題は、当事者だけで解決しようとするとかえってこじれてしまうことが少なくありません。

 弁護士にご相談いただければ、法的な権利義務の整理はもちろん、墓じまい巡る法的問題をトータルでアドバイスすることができます。また、本人では対応できないことでも、弁護士であれば、代理人として親族や寺院、業者との交渉を行うことができます。

 墓じまいでお悩みの方は、お早めに弁護士にご相談されることをおすすめします。

 

(執筆者:弁護士 田島直明)

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