
港区で相続・遺言相談は
弁護士による高齢者の法的問題サポート
運営:ホライズンパートナーズ法律事務所
〒105-0003 東京都港区西新橋1-6-13 柏屋ビル9階
受付時間 | 平日 9:30~20:00 |
|---|
アクセス | JR新橋駅 徒歩8分 虎ノ門駅 徒歩3分 内幸町駅 徒歩3分 霞ヶ関駅 徒歩4分 虎ノ門ヒルズ駅 徒歩7分 |
|---|
先祖代々のお墓が郷里にありますが、私も子どもたちも都市部で暮らしており、墓参りや管理が年々難しくなってきました。そこで、墓じまいをして、遺骨を自宅近くの永代供養墓に移したいと考えています。
ところが、親族の一人が「先祖代々の墓を勝手に処分するのは許さない」と強く反対しています。また、菩提寺に相談したところ、住職から離檀料として200万円を提示されました。
墓じまいを自分で行うのは大変なので、代行業者に任せることも考えていますが、どのような点に注意すればよいのでしょうか。
少子高齢化や核家族化を背景に、墓じまい(改葬)を選択する方が増えています。
厚生労働省の「衛生行政報告例」によれば、令和5年度の改葬件数は全国で16万6886件と、10年前(8万8397件)の2倍近くに達し、令和6年度には17万6105件と過去最多を更新しています。
一方で、墓じまいを巡っては、①親族とのトラブル、②寺院とのトラブル(離檀料など)、③墓じまい代行サービスにまつわるトラブルが数多く発生しています。
そこで、このページでは墓じまいを巡る法的トラブルの類型と、その解決方法について解説します。
墓じまいとは、墓石を撤去して墓地の区画を更地に戻し、墓地の使用権を墓地管理者に返還することをいいます。
取り出した遺骨は、別のお墓や永代供養墓、納骨堂、樹木葬などに移すのが一般的で、この遺骨の移転を法律上「改葬」といいます(墓地、埋葬等に関する法律〔以下「墓埋法」といいます〕2条3項)。
改葬を行うには、現在の墓地が所在する市区町村長の許可(改葬許可)が必要です(墓埋法5条)。
許可申請の際には、原則として現在の墓地管理者による埋蔵(収蔵)の証明が必要とされています(墓埋法施行規則2条2項)。許可を得ずに遺骨を移すと刑事罰の対象となり得ます(墓埋法21条)ので、必ず法定の手続を踏む必要があります。
墓地の使用権や墓石は、法律上「祭祀財産」と呼ばれ、通常の相続財産とは区別されます。祭祀財産は遺産分割の対象とはならず、「祖先の祭祀を主宰すべき者」(祭祀承継者)が単独で承継します(民法897条)。
祭祀承継者は、①被相続人の指定があればその者、②指定がなければ慣習に従い、③慣習が明らかでないときは家庭裁判所が定める、という順序で決まります。
墓じまいを行う法的な権限を持つのは、この祭祀承継者です。逆に言えば、祭祀承継者でない親族には、墓じまいを止める法律上の権限はありません。もっとも、後述のとおり、法的に可能であることと、円満に進められることとは別の問題です。
前述のとおり、墓じまいの決定権は祭祀承継者にあり、親族全員の同意は法律上の要件ではありません。したがって、反対する親族がいても、祭祀承継者は墓じまいを進めることが法的には可能です。
墓じまいを検討する理由(遠方であること、承継者がいないこと、費用負担など)と、遺骨の新しい供養先を具体的に示して説明しましょう。
改葬後も墓参できる永代供養墓などを選ぶと、親族の理解を得やすくなります。
撤去費用・離檀料・新しい納骨先の費用について、口頭ではなく書面で合意しておくと、後日の紛争を防げます。なお、自治体によっては墓石の撤去費用に対する補助金制度を設けている場合がありますので、お墓のある自治体に確認してみるとよいでしょう。
弁護士が代理人・調整役として親族間の話し合いに関与する方法や、祭祀承継者の指定について家庭裁判所の調停・審判を利用する方法があります。
寺院墓地の墓じまいでは、檀家をやめる(離檀する)ことに伴い、寺院から高額な「離檀料」などを請求されるトラブルが目立ちます。
国民生活センターには、「離檀料として300万円を請求された」「過去帳に8人の名前があるので700万円かかると言われた」といった相談が寄せられているとのことです。また、離檀料を支払わない限り、改葬許可申請に必要な埋蔵証明書を発行しないと言われるケースや、これまでの墓地管理料の未払い分の一括払いを求められるケースも見られます。
墓じまいは、寺院にとって檀家が減り、収入の減少に直結する重要な問題でもあります。トラブルの背景にはこうした寺院側の事情もあることを理解した上で、長年の供養に対する感謝の気持ちをもちつつ、感情的な対立を避けて話し合いを進めることが円満な解決のために大切です。
改葬許可申請には墓地管理者による埋蔵証明が原則として必要ですが(墓埋法施行規則2条2項)、寺院が証明書の発行を拒んだ場合でも、それだけで改葬が不可能になるわけではありません。
市区町村によっては、申請者側の資料等により埋蔵の事実が確認できれば許可を出す運用も行われていますので、まずは市区町村の担当窓口に相談してみてください。
長年の供養への謝意を示し、承継者がいないなどやむを得ない事情を丁寧に伝えることで、円満に離檀できるケースが大半です。
金額の根拠を確認し、その場で支払いを約束しないことが重要です。
菩提寺との話し合いが難航する場合、その宗派の本山に相談するという方法もあります。
弁護士が代理人として交渉することで、法的義務の有無を前提とした冷静な話し合いが可能になります。すでに支払ってしまった場合でも、事情によっては返還を請求できる余地があります。
近年、墓じまいの手続を代行する業者が増えていますが、次のようなトラブルが見られます。
行政書士が代行できるのは改葬許可申請などの書類作成であり、石材店が行うのは撤去工事です。「全部任せたつもり」だったのに、実際には一部しか対応されていなかったというトラブルがあります。
契約後に「基礎が想定より深かった」などの理由で追加費用を請求されるケースがあります。
霊園や寺院によっては指定石材店以外に工事を依頼できず、相見積もりが取れないため、相場より2~5割程度高額になる傾向が指摘されています。
取り出した遺骨の管理・運搬がずさんで、紛失や損傷が生じるおそれもあります。
代行業者が行えるのは、墓石の解体・撤去、遺骨の取り出し・移送、閉眼供養や納骨の手配、必要書類の案内といった作業にとどまります。
まず、改葬許可申請など官公署に提出する書類の作成・申請代行を業として行えるのは、行政書士(または弁護士)に限られます(行政書士法1条の2、19条)。無資格の業者による代行は刑罰の対象となり得ます(同法21条)。
さらに、弁護士でない者が、報酬を得る目的で、離檀料を請求された場合の交渉など紛争性のある交渉を代理することは、弁護士法72条が禁止する「非弁行為」に該当し、2年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金の対象となります(同法77条)。「寺院との交渉もすべてお任せください」とうたう業者には注意が必要です。
なお、家族・親族への説得や交渉を業者任せにすることは、かえって関係をこじらせる原因になります。親族間の話し合いは当事者間で行い、まとまらない場合には弁護士に相談・依頼するのが適切です。
見積書に撤去工事費・書類代行費・閉眼供養等の内訳が明記されているかを確認し、追加費用が発生する条件も書面化しておきましょう。
あわせて、墓地管理者に指定石材店制度の有無を確認しましょう。
契約書・見積書等の資料を保管した上で、消費生活センター(局番なしの188)に相談できます。
なお、訪問販売や電話勧誘販売で契約した場合には、特定商取引法に基づくクーリング・オフ(8日間)ができる場合もあります。
業者に対して支払済みの費用の返還や損害賠償を請求する場合には、弁護士に相談するのが適切です。
(執筆者:弁護士 田島直明)